患者さんが勘違いしがちな”上手い歯医者さん”の基準
むし歯になって、最近ズキズキ痛み出した。
痛みはないけれど、冷たいものがしみるようになった。
そんな時「ねぇ、良い歯医者さん知らない?」とご家族、ご友人、職場の同僚にお尋ねになられる方は多いかと思います。
“良い歯医者さん”というと、皆さんはどのような歯医者さんのことを認識しているのでしょうか?
- 優しくて、丁寧
- 麻酔が痛くなくて、治療が早い
- きちんと説明をしてくれる
など、おそらく様々な評価基準があるのではないかと思います。
歯科治療の中身(内容)を知る余地がない患者さんからすれば、手に入る情報をもとに判断を行うしかなく、また、患者さんが求めているニーズによっても変わってしまうのが、
「良い歯医者さんの基準」ではないかと思います。
もし仮に、患者さんが、
・仕事が忙しく時間がないので、とにかく早く治療を終えて欲しい
と考えている場合と、
・今後の長い人生において、できるだけ自分の歯で生活できるようにして欲しい
と考えられている場合とでは、歯科医院に求めるニーズ(要求)が全くといって良いほど異なることになります。
この「患者さんが求めるニーズ」と合致しない対応であった場合、そして、明らかに歯科医院側に不誠実な部分があると認識された場合には、医療の内容そのものではない部分で、「良い歯医者ではない」と認識されることになるのではないかと思います。
そして、その延長線上に「このような対応をするのだから、腕もたいしたことはないはず」
という認識が生まれ「上手い歯医者さん」「下手な歯医者さん」の区分けが行われてしまうのかもしれません。患者さんの多くは、
「早く・安く治療を終えられる歯医者 = 上手い歯医者」
とお考えになられている方も多いかもしれません。
確かに、早く・正確に処置ができる歯科治療を多くの歯科医が目指しています。
しかしながら、スピードの速さはその歯科医のモラル一つで変えることができる危うい指標
でもあります。「早く治療ができる」根拠となっている理由が重要です。
- 数多くの治療経験を有し、繰り返し同じ技術を用いることによって、正確性とスピードが増した場合
- 必要な処置を省くことによって、いわゆる手抜きの処置によって、スピードが増した場合
「治療期間が短い」という結果は同じでも、この2つの違いによって「未来の歯の健康」という結果については著しく大きな違いが生じると共に、治療を行ったその時点では「患者さんはその違いに気づくことができない」という重大なリスクが伴います。
歯科医院側と患者さん側の認識の違いとして、最も顕著に表れる処置に「根管治療(歯の根っこの処置)」があげられます。
可能な限り、長期に渡って自分自身の歯を残していただくために、虫歯治療における根管治療は非常に重要な処置であると共に、熟練の歯科医師にとっても、根気と集中力・技術力が必要とされる大変な処置です。
歯の根の内部は、複数の管からなる非常に複雑な構造となっており、ごく小さな医療器具を用いて処置を行わなければならないからです。
しかし根管治療については、患者さんには何をやっているのか分かりにくい処置でもあります。
そのため、歯科医師が一生懸命、歯の根の不純物を取り除こうと努力すればするほどに、「治療が長い」「引き延ばしているのではないか」といった誤解が生まれやすくなってしまいます。
患者さんも、歯科医も、本来求めていることは「一生涯続く健康」であり、患者さんの未来の幸せです。
にも関わらず、互いのコミュニケーションや意思疎通の不足が大きな誤解を招いてしまい、お互いのモチベーションを下げてしまうのは悲しいことです。
本当に上手い歯医者さんはまず、きちんとその人のお口が現状、どのような状態なのかをきちんと診断・説明し、どのような状態が理想であり、その理想的な状態へと導くために、どのような処置が必要なのか、それにはどれくらいの日数や費用が掛かるのかを、きちんと論理立てて説明ができたうえで、患者さんと共通の目標設定を行い、必要な処置を省くことなく、早く正確に行うことができるところを指すと考えます。
患者さんが、自分では直接見ることができない自分の歯に対し、可能な限りリアルな現状と施す処置の内容をご理解いただくこと。そして、共通の同意をもって治療にあたり、治療後の結果についても、きちんとした説明を受けることが必要不可欠です。
行われる治療の内容についての説明がなかったり、省かれたりせず、きちんと自分の治療の根拠について、話してもらえるかどうかが歯科医院選びの大切なポイントであり、その歯科医院に通う患者さんが、どのように健康な状態を維持しているのか、どのような変化を実感しているのかの実例がみられるかどうかも、良い判断材料になるかと思います。
表面的な事象に惑わされることなく、自らが冷静に納得できる根拠が示され、心から同意できる治療を受けられるか?
そして、クリニックに来院されている患者さんが、継続的に通われ、喜んでいる姿を目の当たりにできるかを、しっかりと見ていただきたいと考えます。
むし歯治療は”元に戻す”のではなく”修復”に過ぎない
むし歯の治療に関してもう一つ、多くの患者さんが勘違いされていることがあります。
それは、
「むし歯の治療は“元の状態に戻すものではない”」
ということです。
例えば、風邪や肺炎など内科系疾患の場合「風邪を治す」とは「元の健康な“どこも損傷のない状態に戻す”」ことを意味します。
しかし、現実的に“むし歯の治療”は、終えてみると、
「むし歯になり使用不能となった天然の歯の一部を“取り除き”、人工物(詰め物・被せもの)に置き換える」という結果になっていることに気づかされます。
決して、元の自分の天然の歯と同じ状態に戻っているわけではありません。
つまりむし歯の治療は、治癒したのではなく、置換・修復したに過ぎないのです。
にも関わらず「むし歯の治療をしたらもう大丈夫(元の生活に戻れる)」と考えてしまった患者さんは、その結果として、とても悲しい歯の結末を迎えてしまうことになりがちです。
限りあるむし歯治療の回数
人間の1本の歯は、むし歯の治療で3~4回の治療を繰り返してしまうと、ほぼ抜歯となるといわれています。また、一度歯を削り、代替物である詰め物・被せものに置き換えると、その時点で、むし歯になるリスクが飛躍的に高まるともいわれています。
肉眼では目には見えないものの、詰め物・かぶせものをした場合、自分の歯と人工物の接合部には、必ず“隙間”が生じます。ミクロの世界の住民であるむし歯菌は、そのような隙間に侵入し、より深いむし歯を作りやすい環境を手に入れたことになるのです。
本来、むし歯の治療は「唾液の力で回復が見込めるのであれば行うべきでない」と言えます。
したがって私たちは、ごく初期の虫歯(C0やC1と言われるむし歯が歯の表面のエナメル質の脱灰でとどまっている状態)である時には、極力、歯を削る治療で修復するのではなく、きちんとしたケアの方法をお伝えすることで、唾液による自然治癒力(エナメル質の回復)を高め、削らずに本来の元の状態へ導くことを優先しています。
やむを得ず、むし歯の治療に着手せざるを得ない深い虫歯(C2以上)となった際に、これ以上深いむし歯へと進行させないように、その人が虫歯を作った根本的なリスク要因を検査によって特定し、解消しながらむし歯治療を行っていきます。
私たち歯科医院が最も患者さんのお役に立てるのは、歯を削る治療をする時ではなく、患者さんの歯を一生涯、可能な限り長く維持する役割を担うときであると考えています。
むし歯も多くの場合、家族からの細菌感染症であり、家族ぐるみでのリスク解消が必要となります。
そもそも「痛くならないようにするための歯医者」としての役割・前提・良識があってはじめて、誠実なむし歯治療を行うことができるという信念のもと、私たちは、虫歯治療に関しても、予防的概念を念頭に置いた治療法をベースとして考えながら、更に高度なニーズに答えられる技術の導入に努めています。
多くの日本人がむし歯で歯を失う理由
先ほどの説明でもあった通り、人間の歯は、むし歯治療を行えば行う程に更なるむし歯になるリスクが高まります。
その理由は、
・人工物によって生じた隙間が、むし歯菌を歯の内部へと導く原因になること
・人工物の多くは、天然歯に比べて「プラーク(歯垢)」の付着を誘引しやすいこと
(特に金属の素材は静電気を帯びることで、多くのプラークを付着させ、そのプラークに悪玉菌であるミュータンス菌・乳酸桿菌等が含まれた状態である場合、むし歯の進行を促進させることにつながる)にあります。
日本人と他の先進諸外国の国民の歯の状態を比べたときに差が出ている数値があります。
それが「DMFT」と呼ばれる項目の数値です。
DMFTは、
を示し、それらの状態になっている歯の総数を示しています。このDMFTの総数は、むし歯になるリスクの指標としても使用されており、当然、数が多いほどにリスクが高いといえます。
日本人は、むし歯であれば詰める、を繰り返す文化となってしまったがために、このDMFTが高く、結果的に新たな虫歯を作りやすくなるという悪循環が生まれた結果、虫歯によって失う歯の本数が増えてしまっているといえます。
たった1本の小さなむし歯ができ、そこで削って埋める治療を行う。
その行為そのものが、次々と再発するむし歯の原因となり、また、歯を失うリスクを高めているということを、私たち一人ひとりが知る必要があります。
“できる限り削らないように努力する”のは、私たち歯科医療従事者の役割であり、
“できる限り新しいむし歯を作らないようにホームケアに努める”のが、患者さんご自身の役割です。
私たち歯科医療従事者と患者さんは、一人ひとりの健康を守るパートナーとして協力しあうことが大切です。
これまでの日本人が歯を失う原因である“削って詰める歯科治療”を最小限に留めるために、私たち歯科医療従事者は、患者さん一人ひとりに、歯を守るための、そしてお体全体を守るための大切な情報をご提供していくことが重要であると考えております。
もしも、むし歯治療をすることになったら ~理想のむし歯治療とは?~
不幸にもむし歯ができてしまい、再石灰化による歯の再生が不可能なほどに深くなってしまった場合、どのようなむし歯治療が必要になるのでしょうか?
また、再発を限りなく少なくするために、どのような選択肢があるのでしょうか?
通常、歯の表面は「エナメル質」という物質から構成されており、そのエナメル質の下には、「象牙質」と呼ばれる物質があります。
むし歯が、このエナメル質を通り越し、象牙質に達してしまった場合には、再石灰化による治癒は望めず、歯科医師によるむし歯治療が必要となります。
大切なことは、このエナメル質までの段階でむし歯を食い止めることですが、万一、象牙質に達してしまった場合は、
- むし歯によって壊死してしまった組織を取り除き、歯の内部にむし歯菌を残さず除菌すること(原因菌の増殖に歯止めをかける)
- 削った後の天然歯と人工物との間にできる隙間を作らないように、可能な限り精度・適合の高い詰め物、被せものを製作し、装着すること(原因菌の再侵入の可能性を最小限に抑える)
- 詰め物・被せものには静電気を帯びない、非金属(ノンメタル)の素材(セラミック等)を用いるようにすること(ハイリスク部位への原因菌の再付着を防止する)
- 治療によりお口全体の噛み合わせに不均衡が生じないように、精密な咬合調整(きちんと適正な位置で、すべての歯の噛み合わせのバランスが取れているかを調整する)を行うこと(原因菌以外の原因で、歯のひび割れや破折が起こらないように防止すると共に、全身の不調をきたさないよう、機能的な噛み合わせを獲得する)
- その部位がむし歯になってしまった原因を知り、再発防止のための予防処置を理解し、実践できるように生活習慣を改善すること(自らの力で原因菌を排除する方法を身につける)
- 上記すべてを適切に診査・診断でき、患者さんにご説明できる充実した検査データを取得できる環境下で診療を行うこと
が大切です。また、これらのことすべてを患者さんが望めばいつでも適切にご提供できるクリニックであることが、理想的なむし歯治療の第一歩です。
これらのことがきちんと実現できるようにするためには、歯科医師の技術力だけでは不十分であり、治療に用いる特殊な設備(たとえば歯の内部を除菌するために必要な機能水など)、患者さんの理解を得るための説明やコミュニケーションの場づくり(たとえば、カウンセリングの時間)、治療のステップを省略することなく、1本の歯が全体の歯のバランスにどう影響を与え、体全体のバランスに関わっているのかの精査ができる診療体制など、様々な要因を兼ね備えておく必要があります。
当院は、理想的なむし歯治療とはなにか?を常に考え、必要な対策をクリニックのシステムとして取り入れ、実践できる体制を常に追い求めてきました。
結果として「医療設備として解決できる問題」「人のスキルにより解決すべき問題」「診療の流れやチェック項目など、ソフト面で解決すべき問題」など、あらゆる課題に向き合い、1つ1つ改善を図りながら、現在の体制に至りました。
歯をただ1つの臓器としてだけでなく、全身につながる有機的な存在として、その機能を十分に発揮しつつ、その大切な存在を長期にわたって守り続けるための方法を確立する。
私たちの目的は「今回の治療を最後にし、今後更なる治療を不要とするために、今回の治療は取りうる可能な限り精度の高い治療を施す。そして治療終了後、ご自身のホームケアの質を高めていただく習慣を身につけていただけるよう、適切なアドバイスをすべてご提供するとともに、プロフェッショナルケアのサポートを定期的にご提供できる環境を整える」ことです。
真に価値あるむし歯治療とは、再発を防ぐことができるむし歯治療であり、体全体の機能を健全に保つことができる治療であり、審美的にも満足ができる治療であるといえます。
まだまだ患者さんには情報が行き届いておらず、私たち歯科医療に携わる人間にしか知られていない大切な健康に関わる情報は多々あります。
私たちは、できる限り患者さんにご理解いただきやすい形で、これらの情報をご提供しながら、患者さんと共に、豊かな人生を創造するための歯科治療をすすめてまいります。
エンド~根管治療~と殺菌の重要性
先ほどの理想的なむし歯治療のご説明の中で、
むし歯によって壊死してしまった組織を取り除き、歯の内部にむし歯菌を残さず除菌すること(原因菌の増殖に歯止めをかける)
が大切であることを述べました。
「歯の内部にむし歯菌を残さず除菌する処置を行う」ということは、既に歯の内部にむし歯菌が入り込んでいる状況まで病状が進行していることを意味します。
通常そのような状況の場合は、歯の神経にまでむし歯が進行し、残すことが難しくなっている状況を指します。
やむなく歯の神経を残すことができないと判断せざるをえない場合、
数多くの良識ある歯科医師にとって、むし歯治療の中で最も重要視している処置の1つが、
「エンド ~根管治療~」と呼ばれる、歯の根の処置です。
大きく深いむし歯になった歯では、むし歯菌が歯の根の内部にまで浸透し、歯の根を内部から壊死させていきます。歯の根の内部に溜まったこれらの菌をそのままに放置した状態で、とりあえず痛みを止めて蓋をするような雑な処置を行ってしまうと、治療したその当時は一見痛みもとれ、患者さんとしては治ったような感覚になりますが、近い将来、再度それらの菌が活性化し、気づかぬうちによりひどいむし歯となって再発してくることになります。
ひどい場合は、その後、抜歯する以外に対処法がないような状態になることもあります。
この根管治療をいかに適切に行うことができるかはとても重要であると共に、精度を高く行うには、技術的にもとても難しい治療になります。
というのも、歯の根(内部)は、多くの人が思っている程にシンプルな構造になっておらず、一人ひとり、1本1本の歯により異なる形状で、なおかつ複雑に分岐し、入り組んだ状態になっていることが多いためです。
この根管治療を成功させ、治療終了後も、その歯を維持するうえでの重要な対処として、歯の根の中の「除菌」が必要となります。
多くの方は、1本1本の歯には「神経」が通っており、その神経が重要な働きをしてくれていることをご存じかと思いますが、具体的にどのように役立っているのかを知る人は少ないのが実情です。
私たちはできる限り、歯の神経を残したい、守りたいと考えています。なぜなら、歯の神経は様々な大切な役割を私たちのために担ってくれているからです。
したがって、根管治療についてご説明する前に、そもそも「歯の神経」がどのような役割を私たちのために担ってくれているのかを知っていただきたいと思います。
歯の神経が果たす大切な役割
食事を美味しくするための「温度」を感じる役割
熱い・冷たいなどの温度感覚は、味覚に大きく影響を与え、食事のおいしさに大きく影響を与えます。
歯の異常を知らせるための「刺激」を感じる役割
歯の神経があることで「しみる」「痛む」などの異常を感じ取ることができ、病状の進行を知らせていますが、神経がなくなるとそれ以降は病状の進行を知覚として感じ取ることができなくなり、結果的に手遅れになるまで治療を受ける機会を得られなくなるリスクが高まります。
また、噛み合わせの変化に気づく、つまり「なんだかキチンと噛めていないように感じる」という違和感を感じ取る役割も重要です。人間のお口の状態は常に一定ではなく、顎の骨の変化や歯周病による病状の進行などにより、噛み合わせも変化していくことがあります。その異常に気付かず、放置してしまうと歯周病により歯を失うことになったり、顎関節症を発症したりするリスクも高まります。
歯そのものを常に健康に保つ血流を導き「新陳代謝」を促進する役割
神経がある歯には同時に血流が流れており、この血流から得られる水分や栄養素など、様々な物質によって歯は新陳代謝を繰り返し、固く頑丈な状態を維持し続けています。しかし神経がなくなると、歯は水を与えられなくなった植物のように枯れた脆い状態になり、黒ずみができてくるなど、枯れ果てて死んだような状態になっていきます。歯の神経があることは常に、歯そのものを“血が通う生きた状態”に維持し続けてくれているということです。
むし歯の進行を止め、遅らせる役割
神経があると、仮に初期のむし歯になったとしても、その歯を守ろうと歯の質を固くしようと保護してくれたり、様々な対処を気づかぬうちに施してくれています。しかし、神経がなくなると、そのようなむし歯から歯を守るための力が失われ、神経があった時以上に、むし歯の進行は早くなってしまいます。
このように人間の体にとって、大切な役割を担っているからこそ、私たちはできる限り、歯の神経を残したい、守りたいと考えているのです。
しかしながら、患者さんのお痛みの状況、そして、レントゲンやCTなどの検査結果から導き出される歯の状況から、どうしてもその歯の神経を残すことが困難であると判断される場合には、歯を抜く治療「抜髄」が必要となり、そのあとに、もともと神経があった部分に潜むむし歯菌や膿などを取り除くための「根管治療(根治)」が必要となります。
そして、神経を失った歯を長期間維持し続けるためには、この神経を抜いた直後の「根管治療」の精度が最も重要になります。
神経を抜いた直後の根管治療の精度が不十分だと、歯の根の中に残ったむし歯菌が再度繁殖を繰り返し、免疫力により自然と治癒することが困難になると同時に、歯の根の中で膿を膨らませ、その膿が顎の骨を溶かすなど、更に深刻な症状を引き起こすことになります。
この症状が悪化することにより、蓄膿症など別の病気の引き金になると共に、口臭の原因にもなるなど、より辛い悩みを抱えることにもつながります。
これらの事情から、私たち歯科従事者は、根管治療について十分に時間をかけて行いたいと考えていますが、これらの根管治療には冒頭でもお伝えした通り、細かな歯の複数の管を1本1本、集中して膿や細菌の巣を取り除き、細かな作業を繰り返していく必要があります。
しかしこのような状況をなかなか患者さんお一人おひとりにお伝えすることが難しいため、多くのクリニックでは、複数回必要となる根管治療の重要性を患者さんにご理解いただけずに来院を中断されてしまったり、誠実なドクターが「意味なく来院回数を伸ばされている」という誤解を受けてしまうような状況も起こってしまっているようです。
当院では根管治療をはじめ、各治療の必要性やその根拠、治療方法についても事前にきちんとご説明させていただいているため、ほとんどの患者さんがご納得いただき治療をお受けいただいているためこのような状況は免れておりますが、保険診療に基づく根管治療に時間や回数がかかることは確かなことです。
逆に、必要な根管治療を行わずに「治療が早い」と評判になるクリニックがあるとすれば、それこそが倫理的に問題があると感じます。
また一方で、自由診療による根管治療を推奨するクリニックでは、1回の治療に1時間以上の時間をかけられるなど、環境が整備されているために来院回数を減らすなどの対処が可能ですが、保険診療での根管治療は、国が定める根管治療への評価が非常に低く、1回の根管治療にかける治療時間を長くかけることは歯科医院の経営を圧迫することにつながり、誠実な歯科開業医にとっては非常に悩ましい問題の1つになっています。
当院では、保険診療による根管治療であったとしても、治療に用いる水の全てを人体への安全性が確かめられた殺菌機能水に変えることで、可能な限り十分な時間や回数をかけると共に、歯の根の中の除菌についても徹底的に行えるように工夫をしております。
細菌は根の中に膿が残っていたり、神経を取った後の初回の処置で十分に殺菌・除菌されていなければ、また急速に増えていきます。
当院では、物理的な膿などの除去と共に、エピオス・エコシステム、POICウォーターなどの次亜塩素酸による殺菌機能水を併用することで、より徹底した除菌・殺菌を可能とした根管治療を行っております。
今回の治療を最後にしたい。
Last Treatment(ラスト・トリートメント)を目指し、根管治療の精度を高めつづけています。
治療の精度の重要性
歯の「治療の精度」。皆さんは考えたことはありますか? 実際の治療風景を見ることができないため、患者さんが「精度の高い治療とはなにか?」を実際に目で見て確かめることはほとんど不可能です。 歯科医師の仕事は、知識や経験が重要であると共に、もちろん技術職としての側面もあり、工芸作品を創るような手先の器用さも求められます。そして、それらの技術力の差がでるのは、治療時には噛み合わせや形状的な審美性への満足度が得られていること、治療後には、いかにその歯が長く保たれているかを確認できた時です。 患者さんからすると「痛くなかった」「早くて手際がよかった」「優しかった」ということが技術力を推し量る指標となりがちですが、歯科医師同志の判断基準は、また別のポイントがあります。 むし歯の治療の精度を考えるとき、大切なポイントは最低でも下記の5つあります。
むし歯の治療を行うときに、まず歯全体にバイオフィルム、歯垢(プラーク)や歯石がない状態であること
むし歯の治療の工程として、印象(型取り)という処置があります。歯に汚れが沈着していると、それらが本来の歯の形状と異なる型へと処置を歪ませ、完成した詰め物、被せものの装着時のバランスを損ねます。
歯肉に炎症や腫れがなく、正常な歯肉の状態で治療を開始できること
特にクラウンと呼ばれる被せものを製作する場合、特段の理由がない限り、被せものと歯茎の間のマージンと呼ばれる部分をきちんとフィットする形状で製作する必要がありますが、歯茎が腫れていると、歯茎の状態が絶えず変化し続け、後々、このマージンの隙間が大きく変化し、そこから細菌によるむし歯の進行が悪化してしまいます。
口腔内にむし歯菌、歯周病菌などの悪玉細菌が可能な限り少ない状況となっていること
根管治療中は、歯の表面から歯の根の内部が露わになりますので、外部からの感染も懸念されます。当院では、殺菌機能水を用いて常に殺菌・除菌しながら治療にあたっていますので、歯の根の内部の雑菌すらも死滅させながら、丁寧に歯の根の内部を洗浄、除菌し、お薬を丁寧に隅々まで浸透させていきます。
できる限り、削る部位を少なくしつつ、歯の根の管の形状を、薬が浸透しやすい状態に整えること
患者さんの目には触れませんが、歯の根の除染を行ったあとに詰めるお薬がしっかりと根の隅々にまで浸透することも大切です。しかし、歯の根は非常に複雑な形状をしているので、このお薬がしっかりと入り込みやすくするように、歯の根の形状を整えることが大切であり、非常に根気と技術力を要する処置になります。
患者さんとのコンセンサス(意見の一致)がしっかりとなされており、計画した治療期間・治療回数内できちんと根管治療を終えることができること
根管治療をしっかりとご理解いただいていない患者さんの中には、根管治療中にご予約のキャンセルをされる方もおられます。しかし、根管治療の計画が1回後回しになってしまうということは、多くの場合、「振り出しに戻る」ということにつながります。つまり、折角除染したものが、再度、広がってしまうということです。したがって、まるでイタチごっこのように、根管治療を繰り返さないといけないことになり、患者さんも、医院側も共に疲れてしまう悪循環に陥ります。また、キャンセルしたあとに次回までの治療の期間が空くことによって、一時的に痛みを止めていた薬の効果もきれ、より酷い苦痛に患者さんが悩まれることにもつながります。 したがって、根管治療のことをしっかりと患者さんにご理解いただき、計画通りにきちんと来院いただくこと、そのように患者さんのご理解を促進することがとても重要であると考えております。
そして、未来の治療を発生させないために、最後に必要となる精度の問題は、詰め物・被せものそのものの素材による精度です。
素材の違いにより、取り回しのしやすさが異なります。
たとえば、パラジウムなどの金属の素材は冷めると固くなり、ぴったりと隣接する部位へとフィットさせることが難しいため、どうしても隙間ができやすくなりますが、同じ金属でも、ゴールドという金をベースとした素材は、天然の歯と同等の固さを維持することができ、隣接する部位へもピッタリとフィットした形状で製作でき、むし歯菌が入り込むスペースを最大限に狭められるなど、素材ごとに特徴が異なります。
当院では、保険診療において取り扱いができるものはもとより、現在の医療として最善と考えられる最善の素材と、高度な技術を持つ歯科医師、歯科技工士の連携の技術により、より精度の高い補綴物をご提供しております。
長く自分の歯を維持するためには「最初が肝心」です。
治療を行うことになったその時に、しっかりと治療の精度についても検討していただくことが大切であると考えます。
身体に、そして歯に優しい最先端のマテリアル(詰め物・被せものなど補綴物の素材)
むし歯の治療といえば「銀歯」
昔から、そのようなイメージをお持ちになられている方も多いかと思います。
しかし近年では、治療する部位によっては金属以外の素材も一部、保険でも使用可能となっています。
お口の中に入る素材として、まず一番に考えたいのは「安全性」であると思います。
私たち日本人は、昔から、銀の詰め物や被せものが入ることは「当たり前」と考えさせられる状況で生活してきたため、何の違和感もなく「むし歯の治療には銀歯」を受け入れてしまってきました。
一方で、海外に目を向けると、銀歯と言われる金属の素材を医療として認めている国は、実はほとんどありません。
なぜならば、日本で用いられているような金属の素材は、身体への悪影響について懸念されているからです。
どのような悪影響が懸念されているかというと「金属アレルギー」と呼ばれる症状を発症させることが知られるようになってきたのです。
そのため海外では「身体への悪影響がなく、噛み合う反対の歯にも優しい素材」が求められ、様々な素材の改革が行われてきました。
身体にも、歯にも優しい素材の条件として
- 金属アレルギーなどの悪影響・症状を起こさない、生体親和性が高い素材であること
- プラークなどを寄せ付けにくい素材であること
- 経年変化によるひび割れや摩耗が少ない素材であること
- 対合する歯を傷つけない固さを持つこと
- その人の癖や部位により、割れたり壊れたりしにくい素材であること
などがあげられます。
適合できる素材には、治療部位やその人の生活上の特性などにより、利用可能な種類が異なります。
したがって、ライフスタイルや口腔内の状況に応じて適切なアドバイスを受け、選択することが重要となります。
金属アレルギーのリスク~メタルフリー治療~
先ほど、少しだけ申し上げた「金属アレルギー」について、多くの人が気づかぬうちにその症状に悩んでいることが多いということをご存じでしょうか?
不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる、いわゆる原因不明の症状の多くに、実はお口の中の金属が関係しているのではないか?ということが考えられるようになってきました。
関連が疑われている症状の一例として、
- 慢性疲労
- 頭痛
- 肩こり
- 筋肉痛
- 関節痛
- リュウマチ
- 神経痛
- 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
- イライラ
- うつ症状
- 集中力の欠如
- 不眠症
- 精神疲労
- アトピー性皮膚炎
- 掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)
- 多汗症
- アレルギー性鼻炎
- 再発性の副鼻腔炎
- メニエール病
- ドライアイ
- 顎関節症
- 口内炎
- 喘息(ぜんそく)
- 不整脈
- 貧血
- 高血圧
- 低血圧
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
- 不妊症
- 頻尿
- 夜尿症
- 月経前症候群(生理痛)
- 便秘
- 慢性の下痢
- 過敏性腸症候群
- 逆流性食道炎
- セリアック病
- お腹にガスがたまりやすい
- 肥満
- 糖尿病
- 自律神経失調症
など、非常に多岐にわたり、体内外全体のあらゆる部位に関連することがわかります。
詳しい原因などはまだ正確には解明されていない点も多くありますが、口腔内の金属を除去し、非金属の詰め物や被せものに置き換える「メタルフリー治療」を行ったことによって、これらの症状が改善されたという報告もなされています。
戦後、国民皆保険制度が出来上がった日本では、まだまだ物資が乏しく、また医療技術の進歩も遅れていた日本では、最低限の医療として、海外では使用が禁止されている金属も含め、重金属が歯科治療の素材として利用を認められてきました。
日本における保険診療での歯科治療に用いられてきた素材として、
- アマルガム(水銀)
- パラジウム
- ニッケル
- ベリリウム
などがあり、アマルガム(水銀)については、2016年にようやく保険診療としての利用を中止することになりましたが、今現在でも、その他の金属については利用されているものがあり、多くの日本人の中には、まだまだ、アマルガムを含め、これらの重金属が沢山入ってしまっているのが実情です。
保険診療においても、徐々に金属を用いない素材を推奨しつつありますが、治療部位によっては、リスクが懸念されている素材を用いることを避けられないのが保険診療でもあります(非金属の素材を利用可能な部位であっても、利用可能な素材はハイブリッドセラミックと呼ばれるプラスチックと陶器の混合素材のみであり、色の変化や摩耗による形状変化がしやすいという点も考慮する必要があります)。
患者さんが、これらの情報を知らずにただ盲目的に保険診療を選択されるのではなく、きちんと現状知りえるあらゆる情報を受け取っていただき、ご自身にあった選択をしていただきたいと思います。
当院では、お口の中のリスクをリセットするために、
・悪玉細菌のコントロール
・物理的リスク(噛み合わせ・歯並び)のコントロール
に加え、
・口腔内の金属アレルギーのコントロール
も重要なポイントであるととらえ、有害金属の除去(メタルフリー)の実現を広く推奨しております。
もし、上記のような症状に長期間お悩みであり、その原因がわからずにいるのであれば、一度、お口の中に数多くの金属が入っていないかを確認してみることも大切です。
審美性を高める歯科治療
患者さんが歯の治療に求めるポイントとして、「見た目の美しさ」は重要な要素です。
歯は1本で成り立つわけではなく、歯全体のバランスの中でその1本がどのような役割を果たすのかが重要であることをお伝えしましたが、これは見た目の美しさである「審美性」にも言えることです。
たとえば、歯の美しさを決定する要因としては、
- 色(明度・輝度・彩度)
- 形状
- 隣接歯とのバランス(隙間や凹凸)
などが考えられます。
患者さんの多くは「白いものにしてください!」とおっしゃって頂く方も多いのですが、一概に「白」という色をとってみても、実は様々な配色の「白」が存在しています。
私たち歯科医院では、色の調整を行うために「シェードガイド」と呼ばれる、白さのレベルを測る器具を用いることがありますが、実は歯の白さは、1人1人異なります。
よく芸能人の方などで「不自然に白い歯だな」ということで話題に上がる方もおられるかと思いますが、その方のオリジナル(成人の歯が生えそろった時)の歯の色や、肌の色、口を開けたり、笑ったりした時に見える歯の面積など、相対的なバランスを考えて、シェード(白さのレベル)を合わせなければ、不自然な白さとなってしまうことになります。
多くのむし歯治療の場合、治療する歯は1本です。
その1本だけを不自然に白くすると、金属ほどの色の違いはないにしろ、別の違和感が周囲の人には生じてしまいます。この「色合わせ」についても、保険診療で用いられる白い素材では限界があります。自由診療による素材であれば、周囲のご自身の歯と見分けがつかないほど、自然で美しい白さに“細かな調整”が可能になります。
また、歯が綺麗!と言われる人の特徴は、その「透明感」にあることをご存じでしょうか?
たとえ表面が白い素材を選んでいても、被せものを支える土台となるコアと呼ばれる部分が金属であると、光を当てた時に、歯の内部が影のように黒ずんで見えることがあります。
金属は光を通さないため、歯本来の自然な透明感が損なわれることにもつながります。
もちろん、症状に応じて強固な金属のコアを利用せざるを得ないこともありますが、可能な限り高い審美性を実現するためには、この光のコントロールにも気を配ることが重要です。
当院では、ノンメタル素材においても、更に1歩進んだ審美性を実現することも患者さんのQOL(生活の質)を高める非常に重要な技術であると考えています。
当院で行う審美治療は、咬合などの機能性を第一に考えたうえで、
・ノンメタル素材による審美性の向上
に加え、得意分野とする
・矯正治療によるスマイルサインを最良の状態に整える歯並びの実現
・当院が数多くの技術の中から選び抜いた自然な白さを維持するホワイトニング
を駆使して、その患者さんに最適なプランをご提供しています。
健康な歯を傷つけることなく、補綴物により自然で美しい白さの実現を可能にする新しい技術も取り入れておりますので、ご自身の口元の審美性を高めたい方は、是非一度、当院のトリートメントコーディネーターにご相談ください。
当院が行う自由診療型むし歯治療
これまで、むし歯の治療において知識として知っておいていただきたい情報をいくつかご紹介してきましたが、当院においても、将来の予後がよく、かつ、審美的にも優れたむし歯治療の方法を常に最新の技術と共にアップグレードを重ねながらご提供しております。
ご存じのとおり、むし歯の治療においても、保険診療と自由診療の選択肢が多岐にわたり存在しています。
保険診療においても、その制約が許す可能な限り、精度が高く、安全性が高い方法をとっておりますが、制約上、どうしても自由診療にならざるを得ない部分を含め、本当に安全・安心で、ご自身の魅力をも高める審美的な治療法を含めた方法も、自由診療を含め、実施しております。
通常の保険診療では行われない手法として、
・根管内の次亜塩素酸を用いた徹底した除菌・殺菌洗浄
・精密な形成(むし歯の進行したエナメル質などの部位を取り除き、詰め物・被せものをきちんとセットできる形状に歯を整えること)や精密な印象(詰め物・被せものの型取り)
・メタルフリーと審美性を両立する素材を用いた治療
などがあげられます。実際に、どのような選択肢が生じるかは、1人1人のむし歯の状況によって
様々ではありますが、当院では可能な限り患者さんお一人おひとりにしっかりとご自身でメリット・デメリットを知り、ご検討いただいたうえで、納得して治療に入っていただけるように努めています。
当院では、歯科医師はもちろん当院の歯科医師の治療法に精通したトリートメントコーディネーターと呼ばれる専属の説明担当者が患者さんの疑問に1つ1つ時間の許す限りお答えしております。
ご希望やご不明な点など、どんなことでもお気兼ねなくご質問ください。
あなたにとって今回の歯科治療が最善の選択となることを目指し、私たちがサポートさせていただきます。