当院は、医療機関として求められる様々な品質維持・向上のために、厚生労働省が定める各種施設認定施設基準の取得に努めています。
そのうち、それらの認定を受ける意義・目的も交えて、いくつかの当院が認可されている施設基準項目について、ご紹介させていただきます。
外来環(歯科外来診療環境体制加算)
歯科クリニックにおいては、治療そのものに対してのご不安や恐怖心、緊張感をお持ちの方も多く、また様々な全身疾患を有する患者さんも多数来院されます。
また、麻酔や抜歯(歯を抜くこと)がはじめてのお子様やそれらの処置を行う時には禁忌となる病状をお持ちの方もおられます。歯科治療の際に、様々な身体的なストレスによって、急に気分が悪くなられたり、体調が悪くなるなど、万が一の緊急事態(心停止や呼吸不全など)が起こった際にも、適切な対応が行われなければなりません。
緊急事態の際に適切な対応を行えるようにするためには、医療機関側の設備・装備として、AEDや酸素、救急救命セットなど様々な器具が常に利用可能な状態で保持されていなければならず、またそれらを適切に扱うことができる準備・医療従事者への教育が医療機関側になされていなければなりません。また、症状に応じた適切な医科医療機関との連携がなされているなど、有事に備えた事前の対応が求められます。
命の危険はいつ生じるか分からず、またそのような際には一分、一秒の対応の遅れが致命傷になることも多々あります。患者さんには、常に安心・安全に歯科治療を受けることができる環境の整備が求められていると言えます。
しかし、それらの設備を維持し続けたり、常に見直しを行うにはコストが常に発生します。厚生労働省は、これらの命を守るための対処を歯科医療機関が一定の水準で備えている歯科診療所に対して外来環(歯科外来診療環境体制加算)という認定施設基準を設けると共に、診療報酬として認定施設基準を持つ歯科医療機関のサポートを行っています。
歯科外来診療環境体制加算(外来環)とは、このような基準を満たしていることを、厚生労働省地方厚生(支)局に届出て認可されている歯科医療機関が、(再)初診料及び再診料に加算する点数のことを厳密には指しています。
外来環(歯科外来診療環境体制加算)の認定施設基準(要件)は下記の通りです。
1.偶発症に対しての緊急対応や医療事故・感染症に関する対策など、医療の安全に関わる対策に関して、研修を修了した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること
2.歯科衛生士が1人以上配置されていること
3.患者さんにとって、安心・安全な歯科医療の環境を提供するために、次の十分な装置,器具などを有していること
● AED
● パルスオキシメーター
● 酸素(人工呼吸,酸素吸入用のもの)
● 血圧計
● 救急用蘇生セット
● 歯科用吸引装置(口腔外バキューム)
4.歯科診療時における偶発症など、緊急事態の際に適切な対応が可能となるよう、事前に他の保険医療機関(医科)との連携を確保していること
5.お口の中で用いる歯科医療機器等については、患者さんごとに交換を行ったり、専用の機器を用いて洗浄・滅菌処理を徹底するなど、十分な感染症対策を院内で行われていること
6.感染症のある患者さんに歯科診療を行う際、歯科診療台(歯科ユニット)を適切に確保するなど、院内感染防止対策に関わる診療体制を常時確保していること
7.口腔外バキューム(歯科用吸引装置)などを用いて、歯を削ったり、入れ歯の調整をしたり、歯の被せ物を調整する時などに飛散する細かな物質を吸収できる環境を確保していること
8.認定を受ける歯科医療機関は、緊急時において連携する保険医療機関との連携の方法、その対応およびその医療機関で取り組んでいる院内感染防止対策など、歯科診療に関係する医療安全管理対策を実施していることを院内掲示にて行っていること
歯援診(在宅療養支援歯科診療所)
現在の我が国日本は、これまでにない超高齢化社会を迎えようとしており、75歳以上の後期高齢者の方が多くなる傾向にあります。
従来、歯科での治療といえばむし歯治療がその大半を占めていましたが、いわゆる健康寿命(自立して生活ができる年齢)を伸ばし、より豊かで健康な老後を過ごすためには、オーラルフレイル(お口の衰弱)と言われる摂食嚥下能力(物を噛んで飲み込む能力)
や発話不全などの解消をはじめ、常に清潔で病状が発生しにくい口腔環境を保つことが求められています。
そこで、より多くの国民の皆さまが健康で豊かな人生を長く生き続けるために、医科の医療機関や地域包括支援センターなどとの連携を図りながら、在宅あるいは介護施設などでの療養を歯科医療の立場から支援する施設としての認定、それが歯援診(在宅療養支援歯科診療所)です。
か強診(かかりつけ(歯科医療機能)強化型歯科診療所)
2016年にはじまった認定施設基準ですが、その目的は、これまでの保険診療の概念を一部拡大し(以前までは、いわゆる定期的な病状管理処置が認められていませんでした)、むし歯や歯周病を患った方が、その後症状が重症化していくのを予防・防止するために、定期管理処置を行っていくことです。しかしながら、むし歯や歯周病の重症化を防止するための管理には、歯科診療所側の適切な医療体制や在宅支援も可能な環境づくりが必要不可欠となります。
このような体制・環境が整っており、適切な重症化予防対策がなされていると届出を行い、認可されている歯科診療所が「か強診(かかりつけ強化型歯科診療所)」となります。か強診として認められている歯科診療所では、これまでは難しかった定期的な病状管理などが可能になり、保険診療においても様々な定期的な治療が可能となります。
再生医療等安全性確保法に関わる届出
医療技術の進歩により、再生医療として歯科治療においても、患者さんご自身の血液を遠心分離して得られるフィブリンゲル(CGF, PRF)や多血小板血漿(PRP, PRGF)という歯茎の骨の再生を行う物質を取り扱うことができるようになりました。しかしながら、これらの取扱いには細心の注意を払うことが求められており、適切な環境や体制を整えて、届け出を出して認めらた歯科診療所でなければ行うことはできません。
当院では、インプラントなどの治療の際に、その予後をより良くするためにCGFなどを積極的に用いており、その安全性を確保するために、体制を整えた上で届け出を出して認可を受けております。