むし歯ゼロへの挑戦

当院では最近、精密義歯やインプラント治療、審美歯科治療など高度な治療を患者様に提供することが本当に増えました。
そこで歯科医として最も心を砕いていることが、治療した歯は2度とむし歯や歯周病を再発させないことです。
せっかく患者様がお金と時間を費やして治した歯が、数年後にまた悪くなってしまっては何の意味もないと思うのです。

これまでは、日本人の多くがむし歯の再発と治療を繰り返しながら、結局は多くの歯を失ってきました。
どうやら従来の歯科の活用方法で大切な歯をむし歯から守ることは難しいようです。
では、どうすればよいのでしょうか?

2度とむし歯に悩まされない6つのステップ

ステップ1.むし歯になった本当の理由を知る

むし歯は歯周病同様、慢性の細菌感染症です。
その根本的原因を知るのに役立つのがサリバテストです。
サリバテストは、お口の中の細菌の数・種類を特定します。
また、日頃からお口の中を浄化し、細菌から歯を守る役割を果たしているだ液のパワーを調べます。

ステップ2.あなたにとって最善の対策を知る


tooth06_01むし歯になるリスク要因は以下の7項目に分けられます。

1.お口の中の細菌の量と種類
お口の中には数百種類の細菌が存在していますが、むし歯の2大原因菌はミュータンスレンサ球菌とラクトバチラス菌といわれています。
これらの細菌が多いほど、むし歯になるリスクが高まります。
2.だ液の分泌量
だ液には抗菌作用もあります。
分泌量が少ないとお口の中を清潔に保てず、むし歯菌の温床となります。
3.だ液のパワー
むし歯菌は、人が食事をすると食べ物に含まれる糖分から酸をつくり歯の表面を溶かします。
それが歯の内部に進行することで、むし歯になります。
だ液は溶けた歯の表面を修復する(再石灰化)ことで歯を守ってくれています。
唾液のパワーが弱いと、溶けた歯の修復が間に合わず、むし歯の進行を止めることができません。
4.歯垢(プラーク)の量
歯垢(プラーク)は細菌のかたまりです。
残念ながら、歯磨きだけでは全てを完全に取り除くことはできません。
すると、磨き残された歯垢が蓄積していきます。
当然、歯垢(プラーク)が多いほど、むし歯になりやすくなります。
5.1日の飲食の回数
むし歯菌は、人が食事をするたびに歯を溶かす酸をつくり出しています。
食事や間食の回数が多いと、だ液による歯の修復が間に合わず、むし歯になりやすくなります。
6.むし歯の経験
お口の中の健康を表す指標として世界的なものさしとなっているのが「DMFT」です。
DMFTを簡単に説明すると、現在のむし歯の数と過去にむし歯だった歯の数の合計のことです。
日本では永久歯が生え揃う12歳以降、DMFTが急激に増加します。
これは、歯が悪くなると安易に削って詰めてきた従来の歯科治療では、むし歯の再発を防ぐことができないことを証明しているといっても過言ではないと思います。
7.フッ素の利用状況
フッ素には抗菌作用があり、歯の再石灰化を促す役割を果たします。
現在では日本でも、歯を守るためにフッ素の利用は常識化しています。

以上、人それぞれで個人差があるのですが、検査結果は数値化され、患者様にも「見える」化します。
そうすることで医師は「むし歯になる」リスク値を算出します。

ステップ3.プランニング・実践・測定

tooth06_02 算出された「むし歯になる」リスク値を、1年間安全とされる数値にまで下げるためのプランニングを行います。
自分のリスクにあった対処法を実践して、定期的にリスク値の変動を測定、そして改善が得られているかを確認します。

さらに1年後、再度測定を行い、確実にリスク値の減少が見られたかを確認します。

ステップ4.すでにむし歯のある人は、治療の前にまず歯周病を治療する

tooth06_03 日本の成人の80%が感染していながら、その症状を患者様自身が自覚することが難しい歯周病。
本当の意味で理想的なむし歯の治療は、歯周病が発症・進行しているお口の中の状況では行うことができません。

歯周病により、
・歯ぐきが腫れている
・歯に歯垢や歯石がこびりついて、ぬめりが付着している
・出血がある
以上のような症状が出ている場合、むし歯の治療を行う精度(精密さ)がかなり下がってしまうのです。

例えば、治療後の歯に被せものをする場合、歯と被せものの間に少しでも隙間があると、そこからむし歯菌が侵入します。
歯の表面にくっついたむし歯菌なら歯みがきでかなり取り除くことができますが、歯と被せものの隙間に侵入してしまうと、当然歯ブラシの毛先は届かず、むし歯菌が増殖する格好の棲家になってしまいます。
それを防ぐためには、治療後の歯にピッタリと適合する精密な被せものや詰めものを作成しないといけないのですが、歯周病を発症していると、歯の最も大切な土台の部分である歯ぐきと歯を支える骨が絶えず変形しています。
不安定な地盤の上に家族がいつまでも安心して暮らせる家が建てられないように、いつもグラグラしていたりデコボコしている土台の上に、患者様の歯にピッタリと適合する詰めものや被せものをつくって処置を行うことは不可能といっても過言ではありません。

歯周病により不安定になっているお口の中の環境を安定させることが、2度とむし歯を再発させない第一歩です。

ステップ5.3ヶ月に1回、プロにお口の中をメンテナンスしてもらう

日々、患者様のお口の中を診て痛感するのは、日本人のお口の中には必ず銀歯が入っているということです。
大多数の人がむし歯を予防するために毎日きちんと歯みがきをしているにも関わらずにです。
お口の中に銀歯のない日本人の方が珍しいくらいです。

仮に毎食後、正しく完璧な歯みがきを実践することができれば、むし歯は防げるかというと、答えは「NO!」です。
たしかに、毎日の歯みがきがむし歯や歯周病の発生率を下げているのは間違いありません。
でも、どんなに正しく丁寧な歯みがきを実践しても、お口の中の悪玉菌を完全に取り除いているわけではありません。
お口の中の悪玉菌が悪さができない数にまで減らしているだけです。

歯と歯肉の溝(歯周ポケット)や舌、頬や喉などに隠れて生き残った悪玉菌は、私たちが日常生活の中で食べたり飲んだりする糖分を栄養にして再び増え始めます。
こうして増殖したむし歯菌や歯周病菌がお互いに結託してかたまりとなったのが歯垢(プラーク)です。
歯垢は歯ブラシの毛先が届かないような歯周組織の奥深くへ侵入しようとします。
歯みがきで取り除くことができなかった歯垢は、唾液中のカルシウムによって硬くなり歯石になります。
歯石になってしまうと、歯みがきでは絶対に取り除くことができなくなります。

tooth06_04一般的に歯垢が歯石になるまでの期間は3カ月程度と考えられています。
だからこそ、ご自身の歯が今は悪くなくても3ヵ月に1回は歯科医院に通って、歯みがきだけでは取り除けない歯垢や歯石を取り除いてもらって欲しいのです。
また、従来の「悪くなったから歯医者に行く」場合と違い、あくまで歯のメンテナンスとして通ってもらうので「ツラい」「痛い」思いをすることもありません。

ステップ6.善玉菌を補給して、悪玉菌の増殖を抑える

tooth06_05私たちのお口の中には、数百種類の善玉菌と悪玉菌が力の均衡を保ちつつ共存しています。
むし歯が発症・再発するのは、主に薬剤やストレスなどで善玉菌が減り、悪玉菌が増殖するのを抑えられなくなってしまうからです。

バクテリアセラピー(菌質管理)は、減ってしまった善玉菌を補給することで、悪玉菌の増殖を抑え、崩れてしまっているお口の中の環境を取り戻します。
もともと私たちの体内にいた善玉菌を補給するので、とても安全な予防方法です。

ただ、善玉菌といっても色々な種類がいて、体内の各部位に生息していて、それぞれ果たしている役割が違います。
例えば、腸内で働いている善玉菌と、お口の中で働いている善玉菌とでは、得意とする役割が違います。

大切なのは患者様のお口の中の状態に最適な善玉菌を摂取してもらうことです。
ステップ1のサリバテストにより、患者様のお口の中にいる細菌の種類や量が特定できているからこそ、有効な予防法といえます。

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