世界から見た
日本人の歯の非常識
日本では「年をとれば歯を失うのは仕方がない」と考える人が多いのではないでしょうか。
ところが「歯の健康」先進国であるスウェーデンやアメリカでは違います。
70歳で自分の歯が何本残っているかの平均値を比較してみると、日本では8本なのに対し、スウェーデンでは20本、アメリカでは17本と大きな差があります。
人間の歯の本数は28本(親知らずを除く)あり、食事を美味しく楽しむためには最低でも20本必要だとされていますが、残念なことに日本人は平均すると60歳ごろにはすでにこの20本にまで減少し、そこから急激に悪化して80歳になった時に残っている歯の数はわずか6本です。
つまり、ほとんどの人が60歳を過ぎると入れ歯やブリッジなど不便な人工歯に頼らなければいけない状況になっているのです。これではせっかくの美味しい食事や家族・友人との会話も満足に楽しむことはできません。
世界屈指の先進国であるはずの日本なのに、歯の健康管理についてはどうしてこんなに遅れているのでしょうか?
それは、自分の「歯」に対する意識の違いです。
今でこそ「予防歯科」という言葉が当たり前のように使われるようになりましたが、約30年前までは歯科医療の世界に予防という考えはありませんでした。1970年代にスウェーデンで「歯は悪くなってから治療する」のではなく、「歯は悪くならないように予防する」重要性が世界で初めて打ち出されました。
あれから40年以上が経ち、スウェーデンでは子どもの時から歯の健康を守り育てていく生活習慣が定着し、今では年をとっても自分の歯は残せることを証明しています。
一方、日本で予防歯科という言葉が一般的になってきたのは2000年代に入ってからではないでしょうか?
歯科医を目指していた私ですら、歯学部の4年生だった1999年に特別講義で当時福岡歯科大学の助教授だった境先生から「予防歯科」の講義を受けるまでは「歯は悪くなってから治療するもの」と教えられていたので、「歯が悪くならないように予防する」という発想は全くありませんでした。
日本がスウェーデンより30年近くも遅れをとった背景には、もちろん我々歯科医の責任が大きいことは重々承知しています。
さらにもうひとつの要因として、病気になっても安く治療を受けられる国民皆保険制度(健康保険制度)の存在があります。
国民皆保険制度(健康保険制度)がないスウェーデンや米国では、悪くならないために定期的に歯科で歯のケアとクリーニングを受けている人がそれぞれ90%と80%いるのに対して、日本では未だにわずか2%しかいないのは、病気になっても安価に医療を受けられるため、歯についても「悪くなったら、治療すれば良い」「痛くなってから、歯医者に行けば良い」という風潮が完全に定着してしまっているからです。
ところが今後、健康保険制度における国からの支援、つまり医療分野における保険適用の範囲は、国の政策として更に縮小されることが予想されています。
どういうことか簡単に説明すると、これまでは国が保険適応として治療費の大部分を負担していてくれたので患者様は3,000円の負担で受けられていた治療が、近い将来にはもしかしたら10,000円を患者様が負担しないと同じ治療が受けられなくなる可能性があるということです。
また、生涯に使う医療費で考えた場合、悪くなってから治療するより悪くならないように予防する方が大幅に医療費を削減できることは世界的にも常識になっています。
どうか年とともに歯を失っていくことを決して当たり前だとは思わないで欲しいのです。
これまで日本人は、歯並びがデコボコでも、歯が黄ばんでいても、銀歯がチラッと見えても、それほど気にすることはありませんでした。
でも欧米では、歯が汚い人、歯並びの悪い人は、太っている人、タバコを吸う人と同様、自己管理ができない人間とみなされ、エリートとは決して認めてくれないといわれています。
歯が汚い、歯並びが悪いというだけで、その人の教養や人格が疑われるのです。
それほど歯は、彼らにとって大切な身だしなみであり、育ちの良さをあらわします。
今や日本人も、ビジネスでもスポーツでも日本国内にとどまることなく、世界に飛び出して活躍するのが当たり前の時代になりました。
国際人として認められるために、清潔で美しい口もとと輝くような白い歯は重要なポイントになるのです。
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